録音されたアナウンスだけが繰り返し流れる。
これより先には列車は行きません。
電車はすべて止まっている。
乗ったと同時に発車した富山発猪谷行きの始発列車。ホテルに忘れ物して引き返したのでぎりぎりで焦った。今回の行程は一本でも遅れたらアウト。マジでギリギリchop。始発なのに降りてくる人が何人かいたのが不思議だったけど気にしない。四人掛けのボックス席をおひとり様で占領し、何も見えない窓の外を眺めつつ、夜食に買ったけど食べなかったコンビニのお握りを食べた。梅味。お茶が冷たくて少し悲しかった。
最初に止まった駅で、運転士さんがやってきた。ワンマンだから車掌さんいないのね。「どこまで行かれますか?」って訊かれた。何でそんなこと教えなアカンのやボケ!どこまで行こうが俺の勝手やろ!?とキレる訳もなく、高山から特急に乗り換えて、とりあえず美濃太田まで行きます!と元気に応えました。したら運転士さん、申し訳なさそうに「雪のせいで猪谷で連絡している列車は運休です。復旧は未定で3時間後の次の列車も運休決定してます。富山に帰るならここで降りて引き返してください」とおっしゃいました。この時点でマスオブ岐阜はダメになりました。アイゴー。旅行開始10分で敗退。ホテルで一泊して4時に起きたのに、敗退。もう飛騨高山か下呂温泉でまったりするか。とりあえず猪谷まで行きますと言うと「猪谷には何もありません、本当に何もありません。大丈夫ですか?」と念を押される始末。何もないつっても日本国富山県の富山市なんでしょ?駅前でコーヒーくらい飲めるだろうし、最悪コンビニのコーヒーでもいいので、力強く「行きます!」と応えると、可哀想な人を見る目で「分かりました」と言われちゃいました。ああ、始発なのに降りる人がいたのは、これが原因なのね。
そして到着する夜明け前の終点猪谷。昨日一昨日と見てきた雪とは明らかにレベルが違う積雪量。ああ、これ面白半分で来たらダメなとこや!と今さら気づく。駅としては大きな感じなんだけど、どう見ても無人駅。列車はめっちゃ止まってるし、いくつかの編成はエンジンがかかっている。でも車内は真っ暗で動く気配はゼロ。降りたのは明らかに旅行者の男性二人とぼくの三人のみ。一人はコンデジで構内を撮りながらさっさと改札を出るが、もう一人はホームに残って写真を撮っている。お互いキヤノンの同じプロ機材を持ってて、なんとなく半笑いで会釈。向こうは70-200mmを付けてるので撮りテツなのかしら?こっちは24-105mmで、カメラ向けてるものも明らかに違うんだけど、なんとなく連帯感(笑)高山方向は駅を出るとすぐにトンネルなのだが、明らかに塞がれている感じ?なんかちょっと怖いんですけど。きさらぎ駅系の怖さ?撮りテツ氏がトンネルを撮ってたので、あれ何ですか?と訊くとナントカ鉄道の廃線跡だと教えてくれた。不勉強ですまんの。
とにかく寒い。もう贅沢は言わん。コンビニのコーヒーでも良いから、飲みたいぜ!と、ぼくは改札を出た。