子どもの頃にやってりゃ良かったと今さら後悔してることっていくつかあるんですよ。万引きとか幼なじみとのお医者さんごっことか全裸運動会とか。全裸運動会?
その中でもトップクラスで一回くらいチャレンジしておくべきだったと思っているのがスカートめくりです。スカートめくっても許される年齢の頃って「めくりたい!」ってリビドーが皆無だったのよね。パンツ見てもしゃーないやん?みたいな感じ?
愚か。本当に愚か。もしも時間を戻せるなら、小学生の自分をぶん殴りたい。めくらんか!って。今やったら確実にタイホだもんなぁ。一発起訴だよ。めくりてぇなぁ、オイ!
そういえば小3か小4の頃、毎日のようにスカートめくってた猛者がいましたな。確かキタガワくんって名前だった。変な笑い方しながらスカートめくって、めくられた女の子が追いかける構図。男子の友達皆無のキタガワくん、女子に追いかけられて本当に嬉しそうだった。なんか朧気ながらも思い出してきたぞ?もしかしたら彼ってちょっとピーな男の子だったのかもな。
ぼくは冷笑しながらそんな彼を見てた。気持ち悪っ!って。そんな方法でしか女子と接点持てないの?的に。うわぁ、嫌なガキだな。でもとっくにモテ期は始まってて、日曜日とか女の子たちと遊んでたもん。キタガワくんのことは、本当の本当に心底軽蔑してた気がする。我ながらマジでムカつくガキだな。タイムスリップして「何様だきさん!」って九州弁で罵倒しながら殴ってやりたいわ。
んでキタガワくんは「帰りの会」で毎日弾劾されるのよ。今日キタガワくんにスカートをめくられました!いけないと思いまーす、謝ってください!みたいな感じで。彼は来る日も来る日も、教壇のとこに立たされて謝罪。ある意味クラスの様式美。それを放置し続ける担任も無能だけど。
帰りの会でスカートめくったとか指弾されるの、当時のぼくだったら舌噛み切って自殺するレベルの恥ずべきことだった。あの頃のぼくには羞恥心があった!
でもそんなぼくにも一回ピンチはあったのです。今でも覚えてる。鮮明に覚えてる。やばい舌噛み切るしかない!みたいな危機。帰りの会クライシス!
クラスに井上さんって女の子がいたの。酒屋の娘さん。たぶん11月とか12月、晩秋初冬の時期だった。その日の休み時間に、井上さんは中庭の花壇の縁に腰掛けてたのよ。まだ午前中だった。ぼくは渡り廊下から運動場に出る感じで、彼女を正面から見る位置を歩いてた。座った彼女、膝から下を「ハの字」にしてたから、パンツ丸見えだった。デニム地のミニスカートで、白いパンツ。ガチで鮮明に覚えてるな!(笑)
で、どうするか迷ったんだけど、ぼく伝えたのよ。パンツ見えてるぞ?って。心臓バクバクしてるけど、軽い感じで。女の子だからちゃんと隠す座り方しろよ!みたいに。
むしろパンツより、パンツ見えてるって伝えた瞬間の彼女を覚えてるんだ。「いや~ん」みたいな感じでスカートを両手で押さえてから、わざとらしく頬を膨らませた上目遣いで「えっちぃなぁ!」って言った。えっちぃって言い方、方言なのかもしれないけど、当時女の子がよく使ってた。でもそれは女の子どうしで使う言葉で、スカートめくりしてるキタガワくんなんかは、クソエロ!って呼ばれてた。
怒ったフリをしてるけど全然怒ってなくて、むしろ喜んでるような瞳だった。これね、ぼくの性的な記憶の第一歩なんだよ。あの表情に勃起したもの。最初の記憶にある勃起が同級生の表情って、出発点からマニアック過ぎるやろ!?
その場は少し言葉を交わしただけで、ぼくはドッチボールだか何だか、友達が待ってる場所に行った。だけどめちゃくちゃ後悔してた。今日の帰りの会で「パンツ見えてるって言われました~!」とか告発されるんじゃね?って。井上さんはキタガワくんの被害者の一人でもあったんで、割と頻繁に帰りの会で彼を弾劾してた。あの無様なキタガワくんのように、ぼくもパンツを見た変態として、クラス中の衆目を集めるのか?って。
そう考えたら、気が気ではなくて、その後の授業も休み時間も給食も、まったく他のことを考えられなかった。
そして迎える放課後、帰りの会。もちろん井上さんはぼくを弾劾することなんてなかった。安堵ってこういうことなんだって、ぼくは深い息を吐いたのを覚えている。
そんな記憶。この時期になると不意に思い出すんだよね。そして思い出すと同時に、どうしてスカートめくりをしなかったのかと、悔恨の情に潰されそうにもなる。やれやれ。